マイクロ波による過多月経の治療法

過多月経とは?

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過多月経とは月経時の出血が多いために健康を損なっている状態です。多量の出血は貧血を引き起こし、動悸や立ちくらみを引き起こします。月経出血のたびに仕事が出来ない、衣服や寝具を汚してしまう、貧血症状を起こすような状態が毎月繰り返され、生活の質が著しく低下する事があります。しかし、多くの女性は、我慢して仕事や生活を継続しており、多忙な毎日の中、また受診しにくい気持ちもあり、実際受診するのは状態が悪化してからになることも、少なくありません。この過多月経で悩んでいる女性は全国で600万人いると推定されています。

過多月経の治療法にはどんなものがある?

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これまで、過多月経の患者さんで、保存的治療(薬による治療)が困難になった場合は、開腹・膣式・腹腔鏡により子宮筋腫核出術(子宮筋腫のみ摘出する手術)や、子宮全摘術が行われてきました。このような従来の代表的な治療方法のうち、子宮全摘術は一定の手術侵襲と術中・術後合併症があり、患者さんの負担が大きく、ホルモン療法は薬効が切れれば効果も見込めなくなるなど、患者さんにとって必ずしも好ましいものではありませんでした。

近年、治療時間約30分で、お腹を切らずに行う治療で、負担が少ないにも関わらず持続的な効果が見込めるマイクロ波子宮内膜アブレーション(Microwave Endometrial Ablation: MEA )と呼ばれる新しい治療方法が確立されました。MEAは、経膣的に挿入したマイクロ波アプリケーターによって、子宮内膜を焼灼し、子宮内膜だけに熱変性を起こし、月経量を減少させるという治療です。過多月経のみならず更年期の異常大出血にも効果があります。

本院は、この治療方法について2008年12月に厚生労働省の承認を受けて先進医療として日本で4番目の認可施設として治療開始し、2012年4月に保険適用となり、現在まで多くの患者さんの治療を行ってきました。安全性が高く、術後合併症も少なく、お腹を切らずにすみます。医療費も子宮摘出術に比べて低額であり、出血の減少が図れることから、血液凝固異常のある患者さんの過多月経も、治療することができます。ただし、妊娠希望の方には適応できません。2泊3日の入院で治療可能で、退院後は、すぐに普通の生活が可能です。

閉経までの5-10年を子宮摘出が嫌なために、過多月経を我慢して過ごしている患者さんは多いと考えられています。しかし、その多くはマイクロ波治療によって子宮を温存した状態で過多月経を治療できるのです。

<マイクロ波子宮内膜アブレーションの治療成績>

MEAは、国内で既に20施設以上行われ、治療を受ける患者さんも増え、良好な治療成績が報告されています。

当院での手術時間の平均は37.4 (±12.4) 分入院期間の平均日数は1.4 (±1.7 ) 日出血量の平均は17.0 (±38.3) ml術後無月経は34.7%にみられました。また患者さんへの面接調査では、手術前後の症状の変化を、視覚的アナログ尺度(Visual Analogue Scale : VAS)を用い評価したところ、月経量におけるVASの平均値は10から1.8へ、月経痛におけるVASの平均値は5.0から1.4へと改善を認めました。また貧血の程度を表す血液中のHb値(血色素量)は手術前の平均値10.2 g/dlから手術後12.5 g/dlと上昇しました。患者さんの満足度は10点満点中平均8.7点と良好な結果でした。

このようにMEAは過多月経に対して有効性が高く、低侵襲であり、今後さらに、治療を希望する患者さんの数も増加し、治療可能な施設も増加していくと考えられます。過多月経による不安、不調を感じている方がいましたら、まずはご相談ください。

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