常位胎盤早期剥離
正常位置、すなわち子宮体部に付着している胎盤が、胎児娩出以前に子宮壁より剥離することをいいます。これは、妊娠中期・後期における性器出血の主要な原因であり、現在においても周産期死亡率・罹患率を上昇させる主要な原因です。
重症度によって大きく3つに分けられることが多いです。
軽症(40%):子宮の張りは軽度で、お母さんの血圧は安定しており、赤ちゃんの心拍数異常は認めません。予後はよく、お母さんにも赤ちゃんにも大きな影響を残さないことがほとんどです。
中等症(45%):子宮が頻回に張り、お母さんの頻脈や赤ちゃんの心拍数異常などが起きます。
重症(15%):お母さんのショック状態や止血異常(播種性血管内凝固症候群:DIC)、胎児死亡などを伴うものです。子宮は板状硬(板のように非常に硬い状態)のことが多い。
頻度は、およそ100~200分娩に1例(0.5~1%)であるが、その頻度は少しずつ上昇していると報告が多くなっています。
赤ちゃんが亡くなるような重症例の頻度は、500~750分娩に1例とされています。
どのような人がなりやすいの?
危険因子として以下のことが言われます。
どんな症状がありますか?
性器出血(70~80%)、子宮の圧痛・腹痛(60~70%)、頻回の子宮の張り(約30%)がおもな症状です。
どのような治療がありますか?
診断されたら、まず赤ちゃんが元気かどうか確認します。赤ちゃんの心拍数の異常が認められる場合には、すぐに分娩(緊急帝王切開)となることが多いです。しかし、診断されたときの妊娠週数や赤ちゃんの心拍数の異常が認められない場合などは、管理方法(妊娠継続するかどうか、分娩方法をどうするか)はそれぞれの妊婦さんにあわせて考えていくこととなります。
お母さんのショック状態やDICとなっているときには、その治療も同時に行います。
残念ながら赤ちゃんが亡くなっている場合にも、早期の分娩が必要となります。
注意することはありますか?
少量の出血やおなかの張りでも、長時間続く場合や持続的な痛みを伴う場合、胎動が減少した場合には、かかりつけの病院へ電話し受診していただくほうが安心です。
症状が軽い場合には、前に示したように切迫早産とあやまって判断される場合がありますし、自己判断で受診せずにいると症状が進行することがあります。
いつもと違う症状がある場合には、必ずかかりつけの病院へ連絡をしてください。